このページの本文へ移動
中小企業庁 新しいウィンドウを開きます令和3年度中小企業庁委託事業
メニューを開く閉じる

第2回セミナー
「企業価値創造のマーケティング」開催報告

開催概要へ戻る

講演1 「価値創造のマーケティング戦略のポイント」

1. DX・イノベーションの時代


講師:
ディー・フォー・ディー・アール株式会社
代表取締役社長 藤元 健太郎氏

(1)DXの事例

東京オリンピック・パラリンピックで、男子柔道チームが金メダルを5個獲得し、大躍進しました。その背景には、デジタルの力が寄与しています。井上康生監督が、日本柔道連盟に科学研究部を設立し、GOJIRAというデータベースを開発しました。全試合をデータ化し、4000人以上の選手が仕掛けた技などをデータベース化しました。

(2)イノベーションの普及

2008年にスマートフォンが登場したのを皮切りに、急速にイノベーションが進んでいます。たとえば、東京の日本橋には「アバターロボットカフェ」があります。実際は、障がい者がお客様に対応し、社会参画を果たしています。また、ロボットがコーヒーを入れたり、世界各地のバリスタがサービスを提供したりすることもできます。

3年後の未来を予測するとき、現在の積み上げで予測しがちですが、10年後の未来を予測する(バックキャスティング)ことが重要です。

① 携帯電話ビジネスの例

携帯電話ビジネスでは10年間で大きな変革がありました。2007年AppleがiPhoneを発売した一方、日本ではガラケーが普及していました。2009年、着うた市場は1200億円の市場規模がありましたが、2016年には着うたの配信が終了し、2017年にはiMode対応機種の出荷が終了しました。

②映像配信ビジネスの例

1997年 Netflixは、無店舗オンラインDVDレンタルサービスを開始。
1999年 定額制レンタルサービスを開始。
2007年 ストリーミング配信を始めました。

(3)DXとICTの違い

DXは単にコンピュータライゼーションではなく、組織の変革を伴います。

① DXの例:amazongo

Amazonは海外でamazongoという店舗を展開しています。来店者がバーコードを読み取ると、店舗のどこにいて、どの商品を選んだのかわかるので、レジで精算する必要がありません。Amazonは、人手不足の解消のためではなく、顧客の情報を入手し顧客に商品をリコメンドすることを狙っています。

②DXの例:無人コンビニ(高輪ゲートウェイ)

日本でも無人コンビニが増えてきています。

ただし、日本では人手不足の解消、コスト削減といった現場の課題解決に関心をもつ傾向にあります。しかし、現場の課題を解決するだけではDXになりません。イノベーションを顧客提供価値の創造に活用することで、DXが起こります。
顧客に共感をもってもらいLTV(Life Time Value:顧客生涯価値、ある顧客から生涯に渡って得られる利益)を重視することが重要です。

④モバイルオーダー

モバイルオーダーとは、スマートフォンやタブレットから店の商品を注文・決済できるサービスのこと。トッピングなど自分の好きなものをじっくり選んで注文することができるので、店舗でオーダーするよりもモバイルでオーダーする方が、単価は高くなります。モバイルオーダーは、顧客の価値を高めるサービスです。

⑤ゴースト・レストラン

ゴースト・レストランとは、客席を設けずに、キッチンで調理した料理を宅配専門で販売する飲食店。ガバオのレストラン「わたしのガバオ」を試験的に展開しています。Webとインスタグラムから発信しています。

⑥ユニクロ

ユニクロは、裏にRFID(Radio Frequency Identification)注1を導入し、全工程でどの店舗に商品が置かれているか、在庫がわかるようになっています。顧客の買い物情報が蓄積されているため、どの店舗で商品を購入できるのかがわかる仕組みになっており、顧客価値創造につながっています。

(注1)RFID
電波を用いてタグのID情報を非接触で読み取るシステム。RFIDにより、セルフレジですばやく会計できる。

⑦陣屋旅館

先代から引き継いだ時、売上 2億9000万円、借金 10億円でしたが、売上 2倍、利益率30%に経営が改善しました。Salesforceという顧客管理システムを使って情報を共有化したことが一因です。

⑧ゑびや

ゑびやは、伊勢神宮の参道にある食堂です。客が来店する時間帯が限られており、売上向上と食品の廃棄ロスを減らすことが課題でした。マイクロソフトのAIの仕組みを活用し、客の需要予測をたてた結果、課題を改善することができました。

⑨Fender(マニア向けギターのメーカー)

ターゲットを初心者の女子に切り替え、サブスクリプションでギターのレッスンを開始したところ、ギターの販売増につながりました。

⑨バリューチェーンのシフト Panasonic 「Roaster」

従来のコーヒーメーカーは、コーヒー豆を挽いてドリップするものでした。しかし、ユーザーが手間をかけてもコーヒー豆を挽いてドリップして、上質なコーヒーを味わいたいという志向に変わり、豆を調達して焙煎する工程をメーカーに求めるようになりました。Panasonicは、豆を調達し、焙煎する工程に家電の役割をシフトし、焙煎データを製品に盛り込みました。
デジタルをどの工程で使うかが重要です。

(4)デジタルで変わるマーケットパラダイム

現在のマーケティングはユーザーの行動変容を起こすことが重要です。ユーザーにどんなタイミングで情報を提供すると行動が変わるのかということが、購買フェーズで重要なポイントです。
購買後は使ってみて、楽しかったのか、ハッピーになったのかが大事なので、ユーザーのデータを把握することが重要です。したがって、購買フェーズとサービスフェーズを組み合わせることが、重要な考え方です。

①SNSの中に見えるヒット商品 Instagramを使った分析

ユーザーは、商品を買ったこと、使った感想などをInstagramに投稿しているので、ユーザーの行動を把握することができます。たとえば、ニトリのNクールという寝具を購入した人が、ペットが寝具に寝転んでいる写真を投稿したところ話題となり、商品の認知が広がりました。

企業が情報モラルに取り組む際のポイント

「今日の仕事は楽しみですか」という広告が、ネット上で炎上しました。現在の情報モラルのポイントは、人々の感情に配慮することです。
マーケティングのプロセスのAttention(ユーザーに興味をもってもらうこと)の段階において、SNS上で癒し、笑い、悲しみといった感情に訴えがちです。癒しや笑いはユーザーの共感を得やすい方法です。また、悲しみ、妬み、怒りといったネガティブな感情も、ユーザーの関心を引きつけます。
企業が、意図的ではないにしろネガティブな感情を引き起こしてしまい、SNSで炎上してしまうことがあります。企業は、広告宣伝や広報活動において、情報の受け手がどのような感情をもつかを把握する必要があります。子ども向けのCMで子育て中の親の反感を買った例もあります。