第3回セミナー
「ダイバーシティ(多様性を活かす)経営」開催報告
講演1 「女性が活躍する企業とは」
1. いまは時代の転換期
講師:
聖心女子大学人間関係学科 教授
キャリアセンター長 大槻 奈巳氏
- 生涯未婚率(50歳で未婚の割合)
男性26.7%、女性17.5%(2020年)
男性5.6%、女性4.3%(1990年)
従来は、夫婦+子ども(二人)を単位にした社会保障や税金の仕組みが想定されていましたが、単身者の社会保障や税金の仕組みを考慮する必要があります。 - 人口は2053年に1億人を割り込むと想定されています(2015年から2700万人減)。
- 年収が伸びていません(年収中央値:1994年388万円、2021年370万円)。
- 1980年代以降共働き世帯(妻がフルタイム勤務)が増え、1999年には共働き世帯(妻がパート勤務)を逆転しました。
- 日本のジェンダーギャップ指数は156か国中120位です(2021年3月 世界経済フォーラム調査)。
特に、「経済」及び「政治」における順位が低く、経済面では女性管理職の数が少ないことが影響しています。
2. 女性の活躍推進への国の取り組み
- 1999年 男女共同参画基本法が制定されました。
- 2003年 「社会のあらゆる分野において、2020 年まで に指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」目標(202030目標)が設定されました。
- 男女共同参画基本法に基づいて、男女共同参画基本計画が策定されました。
- 2015年8月:女性の採用・登用・能力開発等のための事業主行動計画の策定を事業主に義務付ける「女性活躍推進法」が成立し、2016年4月から施行されています。
- 第5次男女共同参画計画
202030目標を達成することができなかったため、2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指しました。
3. なぜ、女性の管理職は少ないのか
- 家族重視モデル(女性は家事育児をしなければならないために仕事で活躍できない)
- 職場重視モデル(職場そのもののあり方に女性が仕事を続けていけなくなる・続けていきたくない/管理職を志向しなくなる構造があるのではないかという考え方)
- 今まで主に家族重視モデルから考えられてきましたが、職場重視モデルから考えることも重要です。
- 1986年 男女雇用機会均等法が施行され、男性に限定した募集・採用が規制されました。この法律によって女子の大企業の内部労働市場における基幹労働者としての採用が後押しされました。
- 男女雇用機会均等法が施行されて30年以上経ちましたが、女性管理職が少ない理由は、性別職務分離(性によって割り当てられる仕事が異なること)が挙げられます。男性は基幹的な仕事を割り当てられる反面、女性は周辺的な仕事しか割り当てられないことが多くありました。
4. 若年層の管理職志向
- 管理職志向は男性の方が高いことが調査で明らかになっています。ただし男性、女性ともに管理職志向は年々下落しており、女性の下落率は男性より大きくなっています。(独立行政法人国立女性教育会館調査 報告者は調査メンバー)
- 男性は「将来のキャリアにつながる仕事をしている」と管理職志向が高まり、女性は「専門能力を高めたい」と考え、仕事に満足していると、管理職志向が高まります。
5. まとめ
まとめとして、以下について、提案します。
- 男女同じように仕事を割り当てる。
- よかれと思って女性に女性用の職を割り当てない。
- 人々の志向は、自身が置かれている状況(仕事の在り方、仕事を通して求められるもの、得られるもの)に影響をうける。
- 「女性が仕事を続けられない」「管理職を志向しない」といった前提を見直す。
- 「女性はこういうもの」「女性は管理職を志向しない」「男性のほうがなじむ」といった前提を見直す。
- 「長い時間働く」ことで評価するのではなく、「成果」により評価するようにする。
- 育休、短時間勤務の評価を不利にしない。
人権を尊重した企業活動のポイント
ジェンダー平等は人権尊重の重要なポイントの一つです。個々の企業が「まとめ」に記した内容を実行することが、企業の中で「共生」を実現する第一歩です。