第5回セミナー
「働きがいとウェルビーング」開催報告
講演1 「働きがいとウェルビーイング」
1. 社員にエンゲージメント(充実感)をもたらすポジティブリーダーシップ
講師:
株式会社ビジネスコンサルタント
藤井 包起氏
以下の4項目がエンゲージメント(充実感、組織への愛着心)と深く関わっています。
- 職場を変革する力
- 管理職からの励まし、声掛け
- 成長の機会がある
- 管理職の業績への貢献度
※特にポジティブな視点が必要。
(1)ポジティブ・エナジャイザー
ポジティブ・リーダーは、「エナジャイザー」であることが期待されています。
ポジティブ・エナジャイザーとは、以下のような感覚を持てる人のことです。
- その人から元気をもらえたり、その人と話すと元気がもっと出たりする。
- 「元気付けてもらいたい」時には、その人に会ったり、話したりする。
- その人と話すと、仕事をする気力がもっと湧いてくる気がする。
ポジティブ・エナジャイザーの特徴は
- 他者が成長するのを助ける
- 問題を解決する(トラブルが発生した時でも、率先して解決にあたる)
- 好機を見出す(ピンチの時でもチャンスを見出す)
- インスピレーションと意味を提供する(仕事の目的、意味を提示できる)
- 信頼でき、誠実である
- 感謝の気持ちを表し、謙虚である
- 他者に自信と自己肯定感を与える(強みを見てくれる)
- 微笑む(話かけやすい)
- 誠実でオーセンティックである(言っていることと行動が一致している、裏表がない)
- バイタリティと熱意がにじみ出る
(2)ポジティブ発言とネガティブ発言のバランス
ミシガン大学のキム・キャメロン博士の研究室は、60組織のトップマネジメントチームを対象に、組織のパフォーマンスとコミュニケーションの関係性を調べました。その結果、好業績の組織のトップマネジメントチームは、ポジティブ発言とネガティブ発言の比率は、5:1でした。ポジティブ発言を増やすことにより、組織のパフォーマンスが変わってきます。実際に好業績の組織では、ミーティングの場面でも感謝やねぎらいの発言が多く聞かれます。
2. ポジティブ心理学を活用したWell-beingを高める5つのアプローチ
1998年、アメリカのペンシルベニア大学教授で全米心理学会会長をつとめていたマーティン・セリグマン博士がポジティブ心理学を提唱しました。従来の心理学が、うつ病などの病理を治療するための学問であることに対し、ポジティブ心理学は、人がより良い人生を送るための学問です。
(1)Well-beingに向けたPERMAアプローチ
P:Positive Emotion(ポジティブ感情)
E:Engagement(熱中・集中)
R:Relationship(人間関係)
M:Meaning and Purpose(意味・目的)
A:Achievement(目標達成、成し遂げること)
P:Positive Emotion (ポジティブ感情) |
日々の生活や仕事の中で、楽しさを見出したり、人へ感謝したり、誇りを感じたりといった気持ちを持てる状態 |
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E:Engagement (熱中・集中) |
時間がたつのがすごく早く感じられるくらい、今している活動に没頭していたり、積極的に新しいことをいろいろ考えながら仕事を進められたりしている状態⇒フロー状態 |
R:Relationship (人間関係) |
人と人との絆やつながりがあり、お互いに気遣いあったり、楽しんだり、交流を続けている状態 ※ポジティブな対人関係を通じた「関係性エネルギー」を使うほど、エネルギーが増えます。 |
M:Meaning and Purpose (意味・目的) |
自分の仕事が世の中とつながっていて、意味あるものだと認識できたり、追求すること自体に喜びを感じられる目的をもって、生活を送ったりしている状態 ※会社のミッション、存在意義を従業員に伝えたり、組織の中で再定義したり、従業員個々人のミッション、存在意義を明確にしたりすることが重要です。 |
A:Achievement (目標達成、成し遂げること) |
小さな成功でもそれを意識し、達成感を感じられている状態 |
セリグマン博士は、PERMAを実践することにより、Well-beingに寄与すると提唱しています。また、そのことを科学的に実証しています。
(2)ポジティブ心理学で効果が実証された実習(ポジティブ感情)
- 3つの良いこと
今日あるいは昨日の出来事で、自分にとって良かったと思われることを3つ思い出して書きとめる。1週間続ける。 - 感謝の訪問、感謝の手紙を書く。
- 徳性の強みを体現、発揮する。
- 深く味わう(食事や季節を味わう)
- ライフサマリー(人生を振り返る、「やった!」という体験を振り返る)
- 積極的・建設的反応(積極的にリアクションする)
企業が情報モラルに取り組む際のポイント
情報モラルの視点からも、ポジティブ感情を持っていれば、SNS上で他者を誹謗中傷するような書き込みをしなくなります。「誹謗中傷するのをやめましょう」と諭すのではなく、日常生活の中で、感謝の気持ちを表したり、励まし合ったりしてポジティブ感情を育むのが第一歩です。
(3)徳性の強み
個々人が持っている徳性の強みをPERMAに沿って行動することにより、イキイキと働きがいをもって働くことができます。