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  • 第7回セミナー「新型コロナウイルス感染症流行下のメディアリテラシー」開催報告

第7回セミナー
「新型コロナウイルス感染症流行下のメディアリテラシー」
開催報告

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講演1 「新型コロナウイルス感染症流行下で求められるメディアリテラシー」

1. デジタル・シティズンシップとは何か。SDGsとの関係は?


講師:
法政大学 キャリアデザイン学部
キャリアデザイン学科 教授 坂本 旬氏  

(1)デジタル・シティズンとは

2019年、欧州評議会は「デジタル・シティズンシップ教育ハンドブック」を発刊しました。デジタル・シティズンとは、「社会や政治、行政に関わるためにITを活用する人」を指します。その後、世界的にデジタル・シティズンシップという言葉が広く知られるようになりました。

ポイント

「デジタル・シティズンシップとは、デジタル技術を利用して社会に積極的に関与し、参加する能力」です。重要なのは、デジタル以外の民主主義的なシティズンシップと共存し,相互に影響していると明記されている点です。
(出典:『デジタル・シティズンシップ教育トレーナーズパック』、欧州評議会、2020年)

2020年、スタンフォード大学バークマン・クレインセンターが公表した報告書「デジタル・シティズンシップ・プラス デジタル世界のためのスキルの理解」は、若者のシティズンシップのタイプが変化しつつあると指摘しています。現代においては、若者や子どもたちが、SNSなどのデジタル・ツールを使っていますが、単に使うだけではなく、デジタル社会に参画し、グローバルにコラボレーションすることで、情報社会を創造する役割を果たすことが期待されています。

(2)デジタル・シティズンシップの特徴

  • デジタル・シティズンシップはグローバルスタンダードであり、ユネスコやユニセフ、OECD、欧州評議会などの国際機関の教育理念の一部となっている。
  • デジタル・シティズンシップはSDGsとの親和性が高く、学習指導要領の理念と重なる。
  • デジタル・シティズンシップにはメディアリテラシーや情報リテラシーの概念が含まれている。
  • シティズンシップ教育は、批判的思考を育成することを重視している。
  • 良質の教材や指導案が豊富である。
  • 日本では各地で教職員研修、保護者向け講演・教育実践が進行している。

(3)SDGsにテクノロジーを活用する

SDGsにテクノロジーを活用する方向性で、教育の枠組みが変わってきています。デジタル・シティズンシップ教育とほぼ同じ内容です。
デジタル機器は学ぶための文房具です。子どもたちはスマートフォンを使って、自覚しないままデジタル社会に参加しています。市民としての権利と責任を自覚し、自分を守るスキルを身につけなければなりません。そして、自己表現とグローバルな協働のツールとしてテクノロジーを用いることが求められるようになりました。そうした流れの中で、ユネスコは、メディア情報リテラシー教育やグローバル・シティズンシップ教育のプログラムを開発しています。ユネスコの教育プログラムと持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)が統合されています。さらに、ESDからデジタル・シティズンシップ教育に発展する可能性が十分にあります。
また、2020年、ユネスコは『ラテンアメリカの教育における公共政策としてのデジタル・シチィズンシップ』の中で、「デジタル・シチィズンシップは、人々が批判的、倫理的、創造的な方法でデジタル環境にアクセスし、理解し、分析し、制作し、使用することを可能にする能力である。」と定義しています。
子ども向けだけではなく、広く市民のためのデジタル・シティズンシップ教育も普及しています。

企業が情報モラルに取り組む際のポイント

情報モラル教育からデジタル・シティズンシップ教育への移行が進みつつあります。

企業においても、従業員はデジタル市民として、社会に参加し、市民としての権利と責任を自覚しなければなりません。
メディアリテラシーはステレオタイプや偏見を排除し、多様性を尊重する力で、人権と深く関わっています。
企業の中で、多様性を尊重する姿勢を身に付けることが、デジタル・シティズンシップを育成する第一歩です。

ポイント

メディアリテラシーと人権は深く関わっています。
メディアは以下のコードによってコード化されています。
レベル1(現実社会のコード)
レベル2(慣習的な表現コード:技術的・象徴的・言語)
レベル3(イデオロギーのコード)
個人主義、人種差別、ジェンダー、資本主義、家父長主義など


コードの中に無意識に偏見やステレオタイプが刷り込まれていないか、注意する必要があります。
メディアリテラシーは、発信者の「意図」ではなく、無意識の中にあるステレオタイプやバイアスを読み解く力です。


メディアを通して、情報が悪循環している状況に対し、国連は、メディア情報リテラシーについて「悪循環を断ち切るためのクリエイティブでクリティカルな思考能力が重要」と提起しています。

多様性とステレオタイプは、対立する概念ですが、私たちは両者を意識して、表現しなければなりません。自分が発信するメッセージがどのように受け止められ、どのような文脈でとらえられるかを考える必要があります。これがメディア情報リテラシーの基本です。

2. 市民社会におけるデジタル・シティズンシップの課題

オンラインの誹謗中傷・ヘイトスピーチ、「フェイクニュース」と陰謀論、フィルター・バブルといった現象は、子どもよりも大人の問題です。

(1)オンラインの誹謗中傷・ヘイトスピーチ

オンラインの誹謗中傷は、ネット上で蔓延しています。
アメリカのニュース雑誌『タイム』は、「デジタル化が進む今日の社会の一員として責任ある行動をとるためには、新たな「サイバー・シティズンシップ」のスキルが必要となります。」と記しています(2021年1月21日号)。

(2)「フェイクニュース」と陰謀論

コロナ禍において、ワクチンに関する偽情報、根拠のない情報がネット上にあふれました。偽情報は、医者や研究者など権威があるとされている個人のブログから拡散されました。偽情報は、感情に訴えかけ、医者や研究者が発した情報なので、多くの人が情報を信じてしまいました。
ユネスコは「ディスインフォメーション(偽情報)」という用語を使って、警鐘をならしています。

3. まとめ

  • 情報モラル ⇒ デジタル・シティズンシップへの転換の時期に来ている。
    欧米ではすでに転換し、デジタル・シティズンシップ教育が始まっている。
  • デジタル・シティズンシップはSDGsとつながっている。
  • 「フェイクニュース」と陰謀論は、民主主義を危機に追いやる。
  • メディアリテラシーは、ステレオタイプや偏見を排除し、多様性を尊重する力
  • 発信者としての責任は、多様性と人権の尊重
    企業は発信者としての責任があるため、多様性と人権を尊重しなければならない。
    従業員一人ひとりにも、多様性と人権を尊重することが求められる。