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  • 第7回セミナー「新型コロナウイルス感染症流行下のメディアリテラシー」開催報告

第7回セミナー
「新型コロナウイルス感染症流行下のメディアリテラシー」
開催報告

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講演2 「情報社会と人権・見えない排除,バイアスについて考える」

1.情報社会で新たに生み出される差別


講師:
鳥取県教育委員会・鳥取県情報モラルエデュケーター 今度 珠美氏

新型コロナウイルス感染症の蔓延とともに、新たな人権問題が起こりました。コロナ渦で、感染者への差別・偏見が明らかになりました。感染者のSNSが特定され、感染者の情報がネットにさらされました。自粛警察が法的根拠も人権も無視し、制裁を加えました。
しかし、感染者が差別されることを恐れて感染を隠してしまうと、有効な対策をとることができないのです。
また、コロナ禍に「コロナは風邪と同じ」「「ワクチンで遺伝子情報を書き換えられる」といったデマ情報がネット上にあふれ、深刻な問題になりました。

情報を正しく見極めるための6つのポイント

  1. 情報の出どころをチェックする。
  2. 他のサイトやメディアでも確かめてみる。
  3. 見出しだけを読むのはやめよう。
  4. 記事の日付もチェックする。
  5. 誰が書いたか確かめよう。
  6. 見たい情報だけを見てしまいがち。情報を疑う。違う意見も見てみる。

2. 正しい知識を身につけ、差別・偏見につなげない

現在、日本では子どもの6人に一人が相対的貧困状態にあると言われています。
あるテレビ番組で貧困家庭の女子高校生が出演しました。テレビ画面にアニメグッズが飾ってある部屋が映しだされていました。それを見た視聴者が「アニメグッズを買えるのだから、貧困ではないだろう」「貧困になるのは自業自得だ」などといった誹謗中傷がSNSに書き込まれ、女子高校生の名前や通っている学校名が特定されてしまいました。
こうしたメディアで生み出される差別が生まれた背景に、相対的貧困の意味が理解されていないことがあげられます。貧困には二つの定義があります。「絶対的貧困」とは,人間として最低限の生存を維持することが困難な状態をいいます。「相対的貧困」とは,その国の文化水準,生活水準と比較し困窮した状態をいいます。現在,世界的に貧困率算出の貧困とは「相対的貧困」を採用しています。しかし、多くの人が抱く貧困のイメージは絶対的貧困です。貧困とは何かを知ることは、差別や偏見につなげないために重要です。
情報の真偽を見極め、差別・偏見を防ぐには,正しい知識を得て、人権教育、歴史教育を行うことが必要です。正しい知識を学ぶことが人権侵害の抑止力になります。
生まれながら差別をする人はいません。差別・偏見は、人が作り出した社会構造、そしてそれを伝えるメディアが生み出すものです。

3. 情報は偏る

「アメリカ」「イギリス」「日本」の一週間のYahoo!「トップニュース」のクリックされるカテゴリーの割合を比べると、日本では芸能ニュースの比率が高いことが明らかになっています。多くの人の要望に応じて、ニュースが作られています。何を見ているかではなく、何を見ていないか、何が見えなくなるのかを知ることは重要です。
すべての情報は送り手の意図を持って構成、編集されています。メディアリテラシーとは、人によって受け取り方の違う問題に対して、『メディアの発信がどちら側に立っていて、そうでない側からはどう見えるかを考える』能力、情報の背景や影響について考え行動する能力です。したがって、そうした能力を身に付けるには、社会を知ることが求められます。

4. メディアは多数派の側に立つ

アメリカ北東部にあるマーサズ・ヴィンヤード島では、隔絶された地域性等により20世紀半ばまで多くの島民が聴覚障害をもっていました。島民同士のコミュニケーションの主体は手話でした。マーサズ・ヴィンヤード島では、「聞こえない」ことは「障害」ではなく、手話を使えないことが不自由となりました。障害とは、機能の損傷や不全ではなく、他者との比較によって生じる「数」の問題であることがよく分かる事例です。
障壁を生み出しているのは、障害者ではなく、健常者という多数派にあわせて作られた社会と、音声言語が主体の情報社会であり、伝えるメディアです。社会のあり方が変われば、少数派が生きやすくなるのではないかと思います。
メディアは多数派の側に立つことが多く、少数派は配慮されにくいのも事実です。社会の多様性への配慮を育むためには、数の論理や固定概念に流されない姿勢が求められます。
政治家による性的マイノリティに関する差別的な発言が後を絶ちません。また、女性の容姿や年齢、母親はこうあるべきといったバイアスにとらわれたテレビCMが放映され、炎上しています。

なぜそうした炎上が起きるかというと、CMなどの作り手がバイアスをもっているからだと思われます。1960年代から1970年代の高度経済成長期に、「男は仕事、女は家事・育児」という「性別役割分業意識」が広く浸透しました。高度経済成長期に生まれた性役割分業規範を今も反映させるCMが批判の的になっています。

企業が情報モラルに取り組む際のポイント

欧米では、デジタル・シティズンシップはスタンダードな学び、情報モラルに代わる概念として定着しています。

デジタル・シティズンシップ教育の特徴は、以下の通りです。

  • デジタル・シティズンシップ教育は、学習者の知的創造を阻害しない。
    (「○○してはいけない)といった抑止型の教育ではない。」
  • 子どもを信頼し価値観の違いに配慮している。
  • ICTの特性を善き利用に結びつけている。
  • メリットとデメリットを検討する。
    (従来の情報モラル教育は、悪い特性や悪い結果を中心に強調している。)
  • 人権と民主主義のための情報社会を構築する善き市民となるための学び⇒人権教育につながる。
    (従来の情報モラル教育は、危険を回避し、個人の安全な利用のためだけの学びにとどまっている。

企業でも、従業員が善きデジタル・シチィズンとして情報社会に参画し、どんな情報社会をつくりたいかを考え、人権を尊重した行動をとるようになることが求められています。

参考

デジタル・シティズンシップ教育が扱うテーマ:以下の6領域

  1. 「メディアバランス」
  2. 「プライバシーとセキュリティ」
  3. 「デジタル足あととアイデンティティ」
  4. 「対人関係とコミュニケーション」
  5. 「ネットいじめ,オンライントラブル」
  6. 「ニュース・メディアリテラシー」

人権問題、人種差別、政治、社会的な活動などのテーマも扱う。