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第8回セミナー
「知的財産権と企業経営」開催報告

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講演2 「企業経営で知っておくべき知的財産権 (著作権を中心に) 」

1. 知的財産権とは


講師:
Field-R法律事務所 
弁護士 福地 研志氏

知的財産権の身近な例としては

  • 会社や商品を紹介するウェブサイトに掲載される文章、イラスト等⇒著作権
  • 商品名やブランド名⇒商標権
  • 商品の「仕組み」に関する特許権
  • 「デザイン」に関する意匠権

などがあげられます。

著作権を侵害した場合、次のようなペナルティを課せられます。

①民事上のペナルティ

損害賠償を請求されたり、侵害物を差止め・廃棄したりすることになると、時に高額にもなり、差止めはビジネスの展開に多大な影響を及ぼします。

②刑事上のペナルティ

10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。

③社会的ペナルティ

「パクリ」「遵法精神が希薄」とのレッテルをはられ、社会的信用の失墜につながります。

著作権の侵害は、深刻な結果を招きかねないので、要注意です。しかし裏を返せば、知的財産権侵害は、このようなペナルティが用意されるレベルの損害を、被害者側に生じさせる可能性がある、ということです。

2. 著作権とは何か?

(1)著作権とは

著作権とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である「著作物」を、他人が特定の方法で利用することを禁止する権利です。
著作権法では、以下のように目的について記されています。
「第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
絵を描く、写真を撮るといった表現行為をすれば、登録する必要がなく、著作権は発生します。

(2)著作物とは

著作物とは、

①思想又は感情を
②創作的に
③表現したものであつて、
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの です。

①思想又は感情を

データ、歴史的事実、ゲームなどのルールそのものは著作物ではありません。
著作者の思想や感情が表された小説、ノンフィクション作品、ゲームなどのルールを解説する文章などは著作物です。

②創作的に

著作者の個性が表れていると判断されたものが著作物です。
スナップ写真、子どもの描いた絵、(ある程度の長さの)新聞記事などは著作物です。

③表現したものであつて、

アイデアだけでは著作物ではありません。アイデアを具体化した企画書、商品のデザインのように表現に落とし込んだものは著作物として保護されます。

④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

工業製品・実用品は著作物ではありません。ただし、高度の美的特性を有して、純粋美術と同様に鑑賞の対象になり得るものであれば、大量生産される工業製品であっても、「応用美術」として著作物になります。

(3)著作権者とは

著作物の著作権は、原則として「著作者」が持っています。「著作者」とは「著作物を創作する者」と定義されているので、法律上の原則では「著作者」=「著作権者」です。著作物を使いたい場合、著作権者から許諾を得なければなりません。
ただし、著作権が発生した後に、著作権を譲渡することができます。その場合、「著作者」≠「著作権者」です。著作物を使いたい場合、著作権を譲渡された人に許諾を得る必要があります。
あるいは、著作権は著作者に残っているけど、管理窓口を別に設けている場合もあります。たとえば音楽の場合、楽曲をつくった作詞家、作曲家が著作権者ですが、音楽著作権協会(JASRAC)が著作権を管理しています。楽曲を使いたい場合、JASRACに許諾申請します。

著作者の例外規定があります。その一つが、職務著作です。
a) 法人等の発意に基づき
b) その法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラム以外の著作物で
c) その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの
の場合、別段の定めをしていなければ、著作者は実際に作業した個人ではなく、雇い主の法人等になります。

(4)著作権の内容

権利の種類 内容
複製権 著作物を有形的に再製する権利
上演権・演奏権 著作物を公に上演、演奏する権利
上映権 著作物を公に上映する権利
公衆送信権・公の伝達権 著作物を自動公衆送信、(有線)放送する、また、これら公衆送信された著作物を受信装置を使って公に伝達する権利
※例えばインターネットでの利用。サーバーに記録することは「送信可能化」として、ここに含まれる。
口述権 言語の著作物を口頭で公に伝える権利(朗読など)
展示権 美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権 映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利
譲渡権 映画以外の著作物の原作品または複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権 映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)
二次的著作物の利用権 自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用(上記の各権利に係る行為)することについて、二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利を持つ

※著作権法21条~28条

「著作権」はこれらの権利を「束」にしたものです。著作権者はこれらの権利を自由に取り扱うことができます。使用許諾を申請されても、断る、条件付で認める、無条件に認めるなど、自由に判断することができます。
著作者は、権利ごとに扱いを変えることも、権利をさらに細分化して扱うこともできます。例えば、以下の例があげられます。

  • 紙媒体への掲載(複製)はOK。しかし、ウェブサイトへの掲載(公衆送信)はNG
  • 紙媒体への掲載(複製)はOK。しかし、街頭広告への掲載(これも複製)はNG

著作物の使用を許諾する場合、注意する必要があります。使用許諾契約書を結ぶ場合、著作物をどのように使うかを明記することをお勧めします。

Twitterの公式機能としてのリツイートは、リンクを張る行為とほぼ同じと考えられます。新たな複製や公衆送信は行われていないので、著作権侵害にはならないとされるのが一般的です。ただし、リツイートした人には著作者人格権があるので注意する必要があります。

(5)フリー素材の使用

インターネット上にイラストや写真などのフリー素材が多数掲載されており、手軽に利用することができます。
しかし、タダで入手できるからタダで使えるとは限りません。

「フリー」の意味が「タダ」ではなく、「条件どおりに使う限り無料」という意味で使われる場合もあります。「フリー素材」でも使用条件が定められており、「審査して許諾をする際には無料」としている場合もあります。

(6)著作権の存続期間

著作権には存続期間があり、終了後の著作物は自由に利用できます。著作権が消滅した著作物を「パブリックドメイン(PD)」といいます。原則は著作者の死後70年と定められています。

(7)権利制限

著作権は、「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」を目的としていますが、著作者に著作権と独占しすぎてしまうと、「文化の発展」に悪影響を及ぼし、表現の自由などとも衝突してしまうことがあります。
そのため、著作物を利用していても、一定の場合には例外が認められます。たとえば、私的複製、引用、映りこみなどの場合です。ただし、定められている要件をきちんと満たしていないと「例外」は認められません。

①引用
  • 目的に照らして引用が必要であること
  • 引用部分とそれ以外を区別すること
  • 引用部分が従、それ以外が主であること
  • 出典を明示すること

上記の条件を満たした場合、著作物の「引用」に著作権は及びません。
しかし、何が権利制限になる「引用」になるかを判断するのは微妙です。安易に引用することは認められていません。

まとめ

①使おうとするものが「著作物」で
②使う方法が「著作権」が及ぶ方法で
③「著作権者」が自分ではなく
④「権利制限」に当たるといえない場合

⇒ 「著作権者」から許諾を取る必要があります。

3. 著作者人格権

著作物は、著作者の思想又は感情を創作的に表現したもので、財産というだけではなく、著作者の人格が表れています。そこで、人格権という側面から保護する権利が「著作者人格権」です。

以下のような権利があります。

①公表権

著作物を公表するか否か、公表するときの時期・方法などを決める権利

②氏名表示権公表時に名義を表示するか、どの名義を表示するかを決める権利

③同一性保持権

意に反する改変をされない権利

企業が情報モラル、人権尊重に取り組む際のポイント

ICTが普及し、企業経営や私たちの生活が激変しています。社会の変化に対応するためには、思考を変え、行動を変容する必要に迫られています。

消費者教育レベルの思考から探究・知的創造者レベルの思考へ

企業の従業員一人ひとりが、

  • デジタル資源を善く使い
  • コミュニケーションを善くとり
  • 多様性を認めあい
  • 人権に配慮し
  • さまざまな権利を尊重し、また、実現し
  • 共感し、協働し
  • 責任を果たし
  • 吟味思考(Critical Thinking)と創造思考をもって
  • より善き社会づくりに積極的に参画する

というデジタル・シティズンシップの思考に基づき行動することを提言します。